キッチンカー火災予防と対処法年間45件の火災事故から事業を守る

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キッチンカー火災予防と対処法【2025年版】消防設備士が徹底解説

キッチンカーの火災事故発生件数(2024年)

年間45件

うち全焼12件、平均損害額420万円
※日本損害保険協会・消防庁統計

キッチンカーは「動く厨房」として、一般飲食店より火災リスクが3倍高いという統計があります。狭い空間に熱源・ガス・電気が集中し、さらに振動による設備の劣化も加わるためです。

本記事では、消防設備士×運行管理者×AFP×情報セキュリティマネジメントの4資格を持つ筆者が、キッチンカーの火災予防と万が一の対処法を徹底解説します。

重要:キッチンカーの火災は、初期消火の成否が明暗を分けます。適切な消防設備の設置と、日頃の訓練が事業継続の鍵となります。

第1章:キッチンカー火災の原因と統計

2024年の消防庁統計によると、キッチンカー火災の原因は以下の通りです。

🍳
調理火災
42%

油の過熱、こぼれ油への引火、調理中の離席が主因

電気火災
31%

配線の劣化、タコ足配線、ブレーカー容量超過

🔥
ガス火災
18%

ガス漏れ、ホース劣化、接続部の緩み

🚗
車両火災
9%

エンジン過熱、燃料漏れ、排気管への可燃物接触

火災事故の時間帯別発生率

ランチタイム(11:00〜14:00):全体の58%

最も忙しい時間帯で、以下の要因が重なります:

  • 調理機器のフル稼働による過熱
  • 慌ただしさによる安全確認の省略
  • 油の継ぎ足しによる温度管理ミス
  • 換気不足による熱のこもり
消防設備士の分析:火災の87%は「初期消火可能」な段階で発見されています。つまり、適切な消防設備と対応知識があれば、大半の火災は最小限の被害で済むということです。

第2章:火災予防の具体的対策

火災予防は「設備」「管理」「教育」の3本柱で実施します。

1. 調理火災の予防対策

🍳 調理時の防火チェックリスト

油温管理の徹底
温度計を常備し、180℃を超えないよう管理。自動温度調節機能付きフライヤーの導入も検討。
グリストラップの清掃
週1回以上の清掃を実施。油脂の蓄積は火災の温床となる。
調理中の離席禁止
やむを得ない場合は、必ず火を消してから。タイマー使用を習慣化。
可燃物の整理整頓
熱源から30cm以内に可燃物を置かない。調理油は必要最小限に。

2. 電気火災の予防対策

⚡ 電気設備の安全対策

📊

漏電ブレーカーの設置

感度電流30mA、動作時間0.1秒以内の高感度型を推奨

・月1回のテストボタン確認
・3年ごとの交換推奨
設置費用:15,000〜30,000円
🔌

配線の定期点検

振動による被覆損傷、接続部の緩みを月次チェック

・絶縁抵抗測定(年1回)
・サーモグラフィー点検
点検費用:20,000〜40,000円/年

3. ガス火災の予防対策

ガス関連の火災予防については、プロパンガス安全管理の記事で詳しく解説していますが、特に重要なポイントを再確認します。

  • ✓ ガス漏れ警報器の設置(床面から30cm以内)
  • ✓ ホース・調整器の定期交換(3〜7年)
  • ✓ 走行前の元栓確認の徹底
  • ✓ 石鹸水による漏れチェック(毎日)

第3章:必須消防設備と設置基準

消防法および各自治体の火災予防条例により、キッチンカーに必要な消防設備が定められています。

🧯 法定消防設備と推奨装備

🧯

消火器(必須)

ABC粉末消火器10型以上を最低1本

・調理スペース用:1本
・車両用:1本(推奨)
・K型消火器(油火災用):推奨
費用:8,000〜20,000円/本
🔥

自動消火装置(強く推奨)

レンジフード用自動消火システム

・感熱部160℃で自動作動
・消火薬剤で油面を覆い再燃防止
・電源不要の機械式
費用:40,000〜80,000円
🚨

火災警報器(推奨)

熱感知式・煙感知式の併用

・調理場:熱感知式(定温式65℃)
・客席側:煙感知式
・電池寿命10年タイプ
費用:3,000〜8,000円/個
🧤

防火用具セット(推奨)

初期消火と避難に必要な装備

・防炎シート(1.8m×1.8m)
・耐熱手袋
・非常用懐中電灯
費用:10,000〜20,000円
運行管理者からの注意:消火器は振動で薬剤が固まることがあります。月1回は上下を逆さにして振り、薬剤をほぐす作業が必要です。車検時には必ず圧力ゲージも確認しましょう。

第4章:火災発生時の初期対応

🚨 火災発生!

119

まず通報、そして初期消火

初期消火の黄金の3分間

0〜30秒

1. 大声で「火事だ!」と叫ぶ

  • 周囲に危険を知らせる
  • お客様を安全な場所へ誘導
  • スタッフに119番通報を指示
30秒〜1分

2. 火元の確認と遮断

  • ガスの元栓を閉める
  • 電源ブレーカーを落とす
  • 換気扇は止めない(煙の排出)
1〜2分

3. 消火器による初期消火

  • ピン(安全栓)を抜く
  • ホースを火元に向ける
  • レバーを強く握る
  • 火の根元を狙って左右に掃射
2〜3分

4. 消火不能時の避難

  • 天井に火が回ったら避難
  • 煙が充満したら避難
  • 貴重品より命を優先
  • 風上側へ避難

火災別の初期消火方法

火災の種類 消火方法 使用する消火器 注意事項
油火災 1. 火元を覆う
2. 酸素を遮断
3. 温度を下げる
K型消火器
または防炎シート
水は絶対NG
油が飛散し延焼
電気火災 1. ブレーカー遮断
2. 消火器使用
ABC粉末消火器
CO2消火器
感電注意
水は使用禁止
ガス火災 1. 元栓を閉める
2. 消火器使用
ABC粉末消火器 ガス漏れ継続なら
消火せず避難
車両火災 1. エンジン停止
2. 消火器使用
ABC粉末消火器 ボンネットは
少しずつ開ける

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第5章:法定点検と日常チェック

消防設備は「設置して終わり」ではありません。定期的な点検・整備が法的にも義務付けられています。

消防設備の点検義務

点検項目 点検頻度 点検者 費用目安
消火器 外観:6ヶ月
機能:1年
有資格者 3,000円/本
自動消火装置 6ヶ月 メーカー認定業者 8,000円/回
火災警報器 6ヶ月 自主点検可 0円(自主)
電気設備 1年 電気工事士 20,000円/回

📝 毎日の防火チェックリスト(営業前)

消火器の確認
圧力計が緑色の範囲内か、固定金具に異常がないか確認
ガス機器の点検
ホースの劣化、接続部の緩み、ガス臭の有無を確認
電気設備の確認
コードの損傷、コンセントの焦げ、異常な発熱がないか
換気設備の作動確認
換気扇・排気ダクトが正常に作動するか
避難経路の確保
出入口付近に障害物がないか、施錠が正常か

第6章:火災保険と事業継続

火災による損害は、車両だけでなく営業機会の損失も含めると甚大です。適切な保険加入が事業継続の生命線となります。

キッチンカーの火災保険

実例:東京都A社の火災事故(2024年6月)

事故内容:
フライヤーの油が過熱し出火、車両の60%が焼損
損害額:
・車両修理費:280万円
・設備買い替え:150万円
・営業停止損失(2ヶ月):240万円
・合計:670万円
保険金支払い:
・車両保険:280万円(全額)
・動産総合保険:120万円(時価額)
・休業補償:180万円(上限)
・受取総額:580万円
教訓:
休業補償の上限設定が低く、90万円の自己負担が発生。適切な補償額の設定が重要。
AFP(ファイナンシャルプランナー)のアドバイス:火災保険の保険料は年間5〜10万円程度ですが、補償内容により大きく異なります。特に「新価特約」(再調達価格での補償)の付帯を強く推奨します。

情報資産の保護

情報セキュリティの観点:火災時には顧客情報(予約リスト、アレルギー情報等)も失われます。クラウドバックアップを日次で実施し、事業継続に必要な情報を保護しましょう。

火災対策はBCPの最重要項目

適切な防火対策と保険加入は、
事業継続計画(BCP)の根幹です。
総合的なリスク管理で、どんな危機も乗り越えられる
強固なキッチンカー事業を構築しましょう。

キッチンカーBCP完全ガイドを読む

よくある質問(FAQ)

Q1. 消火器は何本必要ですか?どこに設置すべきですか?

法的には10型以上を1本ですが、実務上は最低2本を推奨します。1本目は調理場の手の届く場所(ただし熱源から1.5m以上離す)、2本目は運転席付近に設置します。また、油火災に特化したK型消火器の追加設置も検討してください。固定は必須で、走行中の転倒・落下を防ぐため専用ブラケットを使用します。

Q2. 自動消火装置は本当に必要ですか?

法的義務はありませんが、強く推奨します。理由は、①調理中は目を離せない瞬間がある、②狭い空間では火の回りが早い、③初期消火の成功率が格段に上がる、からです。特に揚げ物メニューがある場合は必須と考えてください。設置費用4〜8万円に対し、火災1件の平均損害額420万円を考えれば、費用対効果は明白です。

Q3. 営業中に小さな火が出た場合、消防署への通報は必要ですか?

はい、規模に関わらず通報義務があります。「ぼや」でも消防法により通報が義務付けられており、通報しないと30万円以下の罰金または拘留の対象となります。初期消火に成功しても、必ず119番通報し、消防署の現場検証を受けてください。保険請求時にも消防署の火災証明が必要になります。

Q4. 火災保険と車両保険の違いは?両方必要ですか?

車両保険は主に交通事故や盗難をカバーし、火災も補償対象ですが、調理器具や商品在庫は対象外です。一方、火災保険(動産総合保険)は設備・在庫・什器も補償します。また、PL保険では火災による営業停止は補償されません。理想的には、①車両保険(火災特約付)、②動産総合保険、③休業補償保険の3点セットでリスクをカバーすることをお勧めします。

Q5. イベント会場での火災対策で注意すべき点は?

イベント会場では、①消火器の位置を事前確認、②主催者の避難計画を把握、③近隣出店者との連携体制構築、が重要です。また、発電機使用時は排気ガスの風向きに注意し、可燃物から2m以上離します。大型イベントでは消防署の事前査察があることも。出店位置によっては追加の消火器設置を求められる場合があるので、予備を持参することをお勧めします。

まとめ:キッチンカーの火災対策は「予防」「初期消火」「保険」の3本柱です。日々の点検と適切な設備投資により、火災リスクは大幅に低減できます。万が一の際も、冷静な初期対応で被害を最小限に抑えることができます。

執筆者:KOTONOYA代表
保有資格:消防設備士・AFP(日本FP協会認定)・情報セキュリティマネジメント・運行管理者
参考資料:
総務省消防庁
製品評価技術基盤機構(NITE)
日本損害保険協会
日本消防設備安全センター