キッチンカー出店許可申請の流れと必要書類【2025年版】
保健所での営業許可取得を4ステップで完全解説
キッチンカー(移動販売車)で開業する場合、一番重要なポイントが、保健所で営業許可を取ることです。本記事では、消防設備士×AFP×情報セキュリティマネジメント×運行管理者の専門知識を活かし、2025年最新の食品衛生法に基づいた営業許可申請の流れを、初心者でも理解できるよう詳しく解説します。
キッチンカー営業許可の基礎知識
2021年6月の法改正による変更点
2021年6月1日以降、改正・食品衛生法の完全施行後は営業届出制度が創設されたことにより、営業許可の対象業種も見直されました。キッチンカーでは「菓子製造業」「喫茶店営業」の区分がなくなり、すべて「飲食店営業」の許可を取得することになります。
⚠️ 重要な変更点
- 営業許可が「飲食店営業」に一本化
- 給排水タンク容量が全国統一(40L/80L/200L)
- HACCPに基づいた衛生管理が義務化
- 手洗い設備の水栓は手指の再汚染防止構造が必須
営業許可の有効期限と更新
営業許可の有効期限は5年間なので、5年ごとの申請・更新が必要となり、更新の際には所定の更新料が発生します。期限切れにならないよう、早めの更新手続きが重要です。
必要な資格と前提条件
1. 食品衛生責任者資格
キッチンカー(移動販売車)の営業許可を取得するためには、「食品衛生責任者資格」が必要です。「食品衛生責任者」は施設において食中毒や食品衛生法違反を起こさないように、食品衛生上の管理運営を行うことが目的で、食品を扱う営業を行う場合、営業許可を受ける施設ごとに1名以上「食品衛生責任者」を置かなければならないと全国で定められています。
食品衛生責任者資格の取得方法
- 各都道府県の食品衛生協会で養成講習会を受講(1日/約6時間)
- 受講料:10,000円前後(都道府県により異なる)
- 講習内容:食品衛生法、食品の衛生管理、食中毒予防等
- 全国共通の資格(一度取得すれば他県でも有効)
💡 講習免除となる資格
以下の資格保有者は、講習会受講が免除され、申請のみで食品衛生責任者になれます:
- 調理師、栄養士、製菓衛生師
- 食鳥処理衛生管理者、船舶料理士
- と畜場法に規定する衛生管理責任者/作業衛生責任者
2. 調理師免許は不要
キッチンカーは飲食店の一種なので「調理師免許」が必要と思う人もいるようですが、キッチンカーの開業には「食品衛生責任者資格」があれば調理師免許は不要です。
営業許可申請の4ステップ
1事前相談(重要!)
保健所に事前の相談(商材・出店場所・キッチンカーの設計図を元に担当者と打ち合わせ)。「販売予定のメニュー」「出店予定地域」だけは決めていきましょう。これらの情報によって、営業許可に必要な条件(キッチンカーに設置すべき設備・申請書類など)が異なるので、保健所職員のアドバイス内容も変わるからです。
持参すべきもの
- キッチンカーの設計図・図面
- 販売予定メニューリスト
- 出店予定地域の情報
- 給排水タンクの容量情報
2申請書類の提出
申請書類に記入(記入方法がわからない場合は保健所の担当者に確認)して申請書提出。書類提出時に、保健所の担当者と、キッチンカーの工事の進捗状況の連絡方法や、立ち会い検査の日程について打ち合わせします。
3施設検査の実施
キッチンカーを保健所に持ち込み施設検査の実施(指摘事項を受けた場合には改善して後日再検査を実施)。設備が申請と異なっている場合や、基準を満たしていない場合は再検査となり、合格した場合は後日営業許可書交付予定日が通知されます。
4営業許可証の交付
検査に合格すると、2週間ほどで営業許可証が発行されます。営業許可証は車内の見やすい位置に掲示する義務があります。
申請から営業開始までのタイムライン
保健所への事前相談、食品衛生責任者講習受講
申請書類の提出、手数料支払い
施設検査の実施
営業許可証交付(検査合格から約2週間)
必要書類チェックリスト
📄 営業許可申請に必要な書類一覧
- 営業許可申請書(保健所指定様式)
- 施設の構造及び設備を示す図面(2通)
- 営業施設の大要(営業形態、取扱品目等)
- 食品衛生責任者の資格証明書(食品衛生責任者手帳等)
- 水質検査成績書(井戸水使用の場合)
- 車検証の写し
- 仕込み場所の営業許可書の写し(仕込みを行う場合)
- 登記事項証明書(法人の場合)
- 申請手数料(16,000円~19,000円程度)
💡 書類作成のポイント
- 図面には全ての設備(シンク、給排水タンク、冷蔵庫等)を明記
- 営業形態は「調理営業」を選択
- 出店場所は曜日別に記載(変動する場合も明記)
- 食品衛生責任者は営業許可申請者と異なっても可
施設基準と設備要件
給排水タンクの容量別営業範囲
キッチンカーの給排水設備に必要なタンク容量も、都道府県ごとに異なる基準で運用されていましたが、改正・食品衛生法の完全施行後は、約40リットル、約80リットル、約200リットルの3種類に統一されます。
タンク容量 | 可能な調理工程 | 取扱可能品目例 | 仕込み |
---|---|---|---|
40リットル | 簡易な調理のみ(温める・揚げる・焼く) | フライドポテト、唐揚げ、中華まん、かき氷 | 不可 |
80リットル | 大部分の調理(2工程程度) | ハンバーガー、クレープ、ラーメン、カレー | 不可 |
200リットル | 複雑な調理(仕込み含む) | 全てのメニュー対応可能 | 可能 |
必須設備チェックリスト
保健所検査で確認される主な設備
- 手洗い設備(センサー式・レバー式等の再汚染防止構造)
- シンク(器具洗浄用・2槽以上推奨)
- 給水タンク・排水タンク(必要容量以上)
- 冷蔵・冷凍設備(温度計付き)
- 換気設備(調理時の蒸気・煙対策)
- ゴミ箱(蓋付き)
- 運転席と調理場の区画(バンタイプの場合)
- 床・壁・天井の材質(清掃しやすい構造)
⚠️ 注意:食品衛生法の改正により、令和3年6月1日から流水式手洗い設備の水栓は手指の再汚染を防止できる構造(センサー式、レバー式、足踏み式等)でなければならなくなりました。
地域別の注意点
営業許可の管轄範囲
保健所による管轄エリアは各自治体で内容が異なります。例えば、東京都ではいずれの保健所で手続きしても都全域での営業が許可されますが、埼玉県さいたま市で許可取得した場合はさいたま市内のみ。他の埼玉県市内では営業ができません。
地域 | 営業可能範囲 | 備考 |
---|---|---|
東京都 | 都内全域 | 23区・八王子市・町田市は各自治体で申請 |
神奈川県 | 申請保健所管轄内のみ | 横浜市・川崎市・相模原市等は別途申請必要 |
大阪府 | 申請保健所管轄内のみ | 大阪市・堺市等は別途申請必要 |
静岡県 | 県内全域 | いずれかの保健所で取得すれば県内営業可能 |
💡 複数地域での営業を検討している方へ
キッチンカー営業の場合は、複数の都道府県で出店するためには、それぞれの地域の保健所で営業許可を取得する必要があります。計画的に申請を進めましょう。
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費用と所要時間
営業許可取得にかかる費用
項目 | 費用 | 備考 |
---|---|---|
食品衛生責任者講習会 | 10,000円前後 | 都道府県により異なる |
営業許可申請手数料 | 16,000円~19,000円 | 自治体により異なる |
水質検査(井戸水使用時) | 5,000円~10,000円 | 検査項目により変動 |
車検証の写し等 | 数百円 | コピー代等 |
合計 | 約30,000円~40,000円 | 1地域あたり |
申請から営業開始までの期間
東京都の場合、申請は「営業開始の10日前」を目安としていますが、申請書の提出から立ち会い検査までは約1週間、立ち会い検査から営業許可までは5日ほどの余裕を持つとよいでしょう。
時間短縮のコツ
- 事前相談で必要書類・設備を完全に把握する
- 車両完成前に図面段階で相談する
- 食品衛生責任者資格を早めに取得する
- 申請書類は事前に記入例を確認する
- 複数地域申請は並行して進める
よくある失敗と対策
失敗例1:設備不備による再検査
手洗い設備が蛇口式だったため、センサー式への改修が必要になった。
対策:最新の設備基準を事前に確認し、図面段階で保健所に相談する。
失敗例2:書類不備による申請遅延
食品衛生責任者資格の取得が間に合わず、申請が1ヶ月遅れた。
対策:開業2ヶ月前には講習会を受講し、余裕を持って準備する。
失敗例3:営業エリアの認識不足
東京都の許可で神奈川県でも営業できると思い込んでいた。
対策:営業予定地域すべての保健所に事前確認を行う。
HACCPへの対応
キッチンカーを含む小規模事業者は、効果的なHACCP(ハサップ)計画を立てるための財源や専門的知識がないケースが多いので、保健所・業界団体・専門家などから、積極的に専門的助言を受けるようにしましょう。
HACCP対応チェックリスト
- 「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」の手引書を入手
- 衛生管理計画を作成(一般的な衛生管理・重要管理)
- 毎日の衛生管理記録を準備(温度記録・清掃記録等)
- 定期的な振り返りと改善の仕組みを作る
よくある質問(FAQ)
Q1. キッチンカーの営業許可申請にはどのくらい時間がかかりますか?
申請書提出から営業許可証交付まで、通常2~3週間程度かかります。事前相談から含めると1ヶ月程度を見込んでおくと安心です。営業開始予定日の10日~14日前には申請を行うことをおすすめします。
Q2. キッチンカーの営業許可は全国共通ですか?
いいえ、営業許可は出店地域ごとに必要です。例えば、東京都と千葉県の両方で営業する場合は、それぞれの地域で営業許可を取得する必要があります。ただし、東京都内では都のどこかの保健所で許可を取れば都内全域で営業可能です。
Q3. 食品衛生責任者資格はどうやって取得しますか?
各都道府県の食品衛生協会が実施する「食品衛生責任者養成講習会」を受講することで取得できます。講習は1日(約6時間)で、受講料は都道府県により異なりますが10,000円前後です。調理師、栄養士等の資格がある方は講習免除で申請のみで取得可能です。
Q4. キッチンカーの給排水タンクは何リットル必要ですか?
2021年6月の法改正により、全国統一で40L、80L、200Lの3種類となりました。40Lは簡易な調理のみ、80Lは大部分の調理が可能、200Lは仕込みを含む複雑な調理が可能です。提供メニューに応じて選択します。
Q5. 営業許可の更新はいつ必要ですか?
営業許可の有効期限は5年間です。期限満了前に更新手続きが必要で、更新料が発生します。更新を忘れると営業できなくなるため、期限の2~3ヶ月前から準備することをおすすめします。
Q6. HACCPに基づいた衛生管理計画書は必須ですか?
はい、2021年6月より全ての食品事業者にHACCPに沿った衛生管理が義務化されました。小規模事業者向けの「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」の手引書を参考に、衛生管理計画を作成し、実施・記録する必要があります。
まとめ:スムーズな営業許可取得のために
キッチンカーの営業許可取得は、事前準備と正確な手続きが成功の鍵です。営業許可の概要や申請・検査の流れを把握し、事前に保健所へ相談することでスムーズに営業許可を取得できます。
営業許可取得の成功ポイント
- 開業2ヶ月前から準備を開始する
- 食品衛生責任者資格を早めに取得する
- 保健所への事前相談を必ず行う
- 設備は最新の基準に適合させる
- HACCPへの対応を忘れずに行う
- 複数地域での営業は計画的に申請する
営業許可は、お客様に安全な食品を提供するための重要な手続きです。しっかりと準備を行い、夢のキッチンカー開業を実現させましょう。